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遺産分割を行う際の考え方(段階的進行モデルについて) | ひろしま相続相談センターのブログ

遺産分割を行う際の考え方(段階的進行モデルについて)

2022年07月01日

カテゴリ:遺産分割

 相続において、亡くなった方の財産を分けることを「遺産分割」といいます。今回は、遺産分割を行う際の考え方について、東京家庭裁判所が採用している遺産分割調停の進め方である「段階的進行モデル」をご紹介します。

 この進行モデルでは、遺産分割を行うにあたって、以下の順番で段階的に協議して決定することが提唱されています。

① 相続人の範囲の確定

② 遺産の範囲の確定

③ 遺産の評価

④ 各相続人の取得額

⑤ 遺産の分割方法

 この進行モデルは家庭裁判所で行われる遺産分割調停を念頭に置いたものですが、調停の場以外でも、遺産分割協議を行う際に参考になる考え方です。

① 相続人の範囲の確定

 遺産分割協議は当事者全員が合意して行います。

 遺産分割の当事者は共同相続人であり、法定相続人(配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹)が当事者となるのが原則ですが、相続人の中に未成年者や意思能力・行為能力のない者・行方不明者などがいる場合には、相続人以外の者(法定代理人・成年後見人・財産管理人など)が当事者となることがあります。

 また、包括受遺者(遺贈の対象となる財産を特定せずに包括的に承継する遺贈を受けた人)や相続分の譲受人も遺産分割の当事者となることができます。

 相続人の範囲は通常は戸籍謄本から確定されますが、戸籍の記載と実際の相続人の範囲が一致しないのではないかという争いが起こることもあります(相続人の廃除や親子関係不存在など)。

② 遺産の範囲の確定

 遺産分割を行う財産の範囲について確定します。

 亡くなった方の財産に属した一切の権利義務は原則として相続人がすべて承継しますが、亡くなった方しか持つことのできない財産や権利(一身専属権)は相続財産とならず、遺産分割の対象にはなりません。

 不動産・預貯金・証券・保険など、亡くなった方の財産の範囲を確定していきますが、亡くなった方の財産かどうか不明確なことがあり、協議で解決できない場合には最終的には訴訟で確定することが必要な場合があります。亡くなった方が配偶者や子・孫の名義で預金を残している場合などは争いになりやすく(名義預金といいます)、相続税や贈与税の課税関係についても注意が必要です。

亡くなった方の債務(借金など)は遺産分割の対象財産ではありませんが、相続人間の協議で債務の負担を決定することも可能です。

③ 遺産の評価

 遺産分割を行う財産の範囲が確定したら、その財産の評価(金銭評価)を行います。

 評価の時点は、原則として現実に分割する時です。

現金や預貯金、上場会社の株式などは評価に争いが生じることは少ないですが、不動産や非上場会社の株式については評価額の争いになりやすく、専門家(不動産鑑定士、税理士、公認会計士など)による評価が必要となるケースがあります。

④ 各相続人の取得額

 各相続人は、各相続人の相続分(持分)に従った金額を取得することになります。

 遺言で相続分が指定されている場合には指定された割合や金額となりますが、遺留分(相続財産について一定の相続人に保障される留保分)を侵害することはできません。

遺言で指定されていない場合は、法定相続分に従って各相続人が取得します。

<法定相続分>

相続人相続分
配偶者と子配偶者1/2子1/2 ※複数いる場合は均等割
配偶者と親配偶者2/3親1/3 ※複数いる場合は均等割
配偶者と兄弟姉妹配偶者3/4兄弟姉妹1/4 ※複数いる場合は均等割

「特別受益」による調整

 相続人間の公平のために、特別な受益(贈与)を相続分の前渡しとして、計算上その贈与を相続財産に加算して相続分を算定します。

「寄与分」による調整

 相続人の中に、亡くなった方の財産に対して特別の寄与(貢献)をした人がいる場合、その人の寄与分は相続財産から除いて相続分を算定します。これによって、特別の寄与を行った相続人は寄与に応じた財産を取得することができます。

⑤ 遺産の分割方法

 各相続人の取得額に応じて、具体的にどのように遺産を分割するかを決めます。

 分割方法には、現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の4種類があります。

 現物分割とは、個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法で、原則的な方法です。

 代償分割とは、一部の相続人が法定相続分を超える額の財産を取得し、他の相続人に対して代償金を支払う方法です。

 換価分割とは、遺産を売却などで換金して分配する方法です。

 共有分割とは、現物分割・代償分割・換価分割が困難な場合に、遺産の一部または全部を物権法上の共有取得とする方法です。

まとめ

 上記の①から⑤の検討を経て合意に至れば遺産分割協議が成立することとなります。当事者での協議がまとまらない場合には家庭裁判所に調停を申し立てて話し合いを行うことができ、調停でもまとまらない場合には審判によって裁判所が判断を下すことになります。

相続や遺産分割は専門的でわかりにくいことや感情的な対立が激しい場合がありますので、困ったときは弁護士などの専門家にご相談ください。


執筆者 

福山正剛法律事務所

弁護士 福山正剛

ひろしま相続相談センター

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