96才のお父様を亡くされたという70代の息子さんから相続のご相談をいただきました。お話を伺うとお父様は若いころから株取引が好きで亡くなる直前まで取引をしていたそうです。
不動産や預貯金の名義だけでなく、株式の名義も変更しなければいけませんね。という話をしましたが、なんとお父様はパソコンを使ってインターネット取引をされていたのです。
誰もパソコンのパスワードを聞いていないし、証券会社のログイン情報も知らない。 お父様から相当な金額の取引をしていると聞かされていた家族はパニック状態になりました。
今後、このような相談が増えてくると思います。 50代、60代はもちろん、70代でも80代でもスマホやパソコンを日常的に使うことが多くなっていて、近年、『デジタル遺品』の 問題が注目を集めています。
スマホやパソコンの中のデジタルデータの状態では、亡くなられた方のインターネット上の金融資産や各種サービスのアカウントなどの存在を相続人が把握しづらく、相続手続きが適切に行われないなどの事態が発生します。
そこで今回は、デジタル遺品に関する注意点などを解説します。
デジタル遺品にはどのようなものがあるのか
デジタル遺品とは、亡くなった人がスマホやパソコンなどのデジタル機器の中や、クラウド上に保存していたデータ等のことをいいます。 デジタル遺品には様々なものがあり、たとえば 以下のようなものがあげられます
- オンラインサービスのIDやパスワード
- ネット銀行やネット証券の取引データ
- ネットショッピングの利用履歴
- SNSのアカウントや投稿データ
- 友人・知人の連絡先
- メールやチャット等のやりとり
- 写真や動画
- 日記やメモ
近年では、デジタル機器でさまざまな情報を管理するのが当たり前ですから、個人情報やプライベートな情報が非常に多く残されています。デジタル機器を処分する前に、遺族はこれらを適切に整理しなければなりません。
デジタル遺品に関連して 起こりやすいトラブルとは
デジタル遺品を遺族が引き継ぐ際、以下のようなトラブルに見舞われることがよくあります。
●デジタル遺品を把握できない
たとえば、亡くなられた方が誰にも話さずにネット証 券で株式投資をしていたり、ネットバンクに口座を開設して資産を移動していたりすることがあります。
スマホやパソコン上にアプリやブックマークなどの痕跡が残っていない場合、相続人がデジタ ル遺品の存在を知ることすらできません。
●IDやパスワードを相続人が知らない
セキュリティ上の観点から、IDやパスワードをメモするなどして保管しているケースは少ないでしょう。特に金融機関のサービスでは、相続人などがIDやパスワードを突き止められないと、相続手続きに支障が出ることがあります。
●有料サービスを解約できない
サブスクリプションサービスなど、一度契約した後は契約が自動更新されるサービスが増えてい ます。サービスの利用状況や解約に必要な情報がないと、引き落としが続いたり、解約手続きが煩雑になったりする可能性があります。
●家族にも知られたくないことを見られてしまった
メールやチャット等のやり取りや写真、動画などの中には、亡くなられた方にとっては大切な想い出でも残された親族は見たくも知りたくないものが含まれていることが多々あります。
これらの物は、残された家族に想定外の精神的ダメージを残してしまう可能性があります。生前に処分するなどの対応が必要です。
これらを防ぐためには、利用しているサービス と解約方法、そのIDやパスワードを「エンディングノートなど」に書くなどして保管し、家族に保管場所が分かるようにするなど、所有者本人による対策が重要です。ただ、生前に分かってしまうと秘密を守れなくなるので保管のための工夫が必要です。
先日、Appleがデジタル遺産の承継をしやすくする『デジタル遺産プログラム』を発表して話題になりましたが、万が一の事態を想定して、デジタルデータの管理について見直してみるとよいでしょう。
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執筆者
司法書士法人 渡邉事務所
渡邉
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